朝食の卵は絶対半熟でないと食べない。でも、大藪春彦~生島治郎~逢坂剛~北方謙三あたりまでのハードボイルド小説の大ファンだ(笑)。
先日「鹿」を食べたから・・かもしれない。なんとなく、稲見一良が読みたくなり本屋へ。なければ書棚の奥から「ダック・コール」を引っ張り出してこようと思っていたが、光文社文庫の棚に「セント・メリーのリボン」があった。表紙がシンプルでまず気に入った。中身は稲見一良だからハズレってことはないはず・・私が変わってさえいなければ(笑)。なにせ稲見一良作品は18年ぶり。
「セント・メリーのリボン」は男の贈り物をテーマに中・短編が5作収められている。稲見一良を読むと、かっこよく死ぬのがハードボイルドちゃいますえ~とつくづく思う。作者は余命を宣告され、死を意識しながら書いたに違いないのに、文面からはニヒリズム臭がない。無駄な心理描写もない。子どもっぽい小道具自慢もない。押し付けがましさが一切無いのに「残る」小説だ。「棺おけに入れて欲しい本」のリストにこの「セント・メリーのリボン」も加えよう。(・・1作家2冊は誰が入れてくれるのかしらないけれど悩むだろうなあ。)
巻末の表題作の主人公は猟犬専門の探偵。能勢の山林に住んでいるので関西住みには馴染み深い場所が多々出てくるのも嬉しかったりする。コテコテの関西弁が飛び交っても(笑)何ら損なわれない稀に見る美しいハードボイルド小説。おススメ☆5。